管である人間と気血津液

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 人間に限らず、動植物の働きをシンプルに考えてみると、生物の根本は一本になり、人は気管・消化管・血管という3本で成り立っているので、この3本の管に関わる東洋医学の気・血(けつ)・津液(しんえき)は生命の根本と考えることができるのではないでしょうか。

1.人は一本の管である

 単細胞生物は、口から栄養を取り、肛門から排泄するなかでエネルギーの伝達などを行うというシンプルな構造をしていますが、多細胞生物の人間の構造も、口から栄養を摂取し、肛門から排泄するなかで消化・吸収を行い、複雑な処理をしていますが、基本は一本の管が中心となっています。

 

 どんな生物も栄養を摂取して生存しているので、動植物は全て一本の管を中心として存在していることになります。そう考えてみると、人の基本構造は脳ではなく、消化管という管になります。

 

2.人は三本の管

 人間は、単細胞生物と比べると複雑な構造をしているのですが、その複雑な構造を支えるシステムも管であり、基本は気管・血管・消化管の3本の管によって成り立っています。

 

 人は食事をすることで栄養を取り入れているので消化管が重要です。人は呼吸によって生命を成り立たせているので気管が重要です。残るは身体の中を循環するメカニズムとして、気管から取り入れた酸素・消化管から取り入れた栄養を血管によって全身に送っていくことになります。

 

 この3本の管は、どれか一つが欠けてしまっても生命を成り立たせていくことができないので、それぞれが重要な役割を持つと同時に、相互に補完しあう関係があります。

 

 消化管がないと食べた物を栄養にすることができないですし、消化管は気管から取り入れた酸素がないと細胞が機能できないですし、血管から栄養をもらっていかないといけないので、消化管が働くためには、気管と血管が大切になります。

 

 気管は消化管から吸収した栄養が血管から運ばれることで成り立っていますし、血管は消化管から摂取した栄養、気管から摂取した酸素によって成り立っているので、3本の管はお互いに助け合って存在していることになります。

 

 人の構造を考えていくと、様々な組織や器官がありますが、それもこの3本の管が正常に働き、連携を取ることで成り立っているので、人体にとって重要な物になります。

 

3.東洋医学の思想

 東洋医学が成立した時代は、機械が発達している現代とは違い、身体の構造を直接見るのが困難な時なので、自然の考え方や働き、人の性質や病気を独自の概念でまとめていっています。

 

 自然や生命の成り立ちは分からないので、「気」という言葉で表現をすることで、全ての現象を言葉で表すことができるようになります。ただし、「気」という単語だけでは文章として成り立ったとしても、分類することが出来ないので、利便性にかけるので分類の概念である「陰陽」「三才」「五行」を導入していきます。

 

 例えば、人の生死は何故起こるのかを言葉として表わすことができないですが、「気」という用語を用いていくと、「人の生死は気によって決まる」という文章でまとめることができますよね。

 

 「人の生死は気によって決まる」と書けば、文章としてまとまりができますが、内容としては具体性にかけます。そこで分類できる概念の「陰陽」を用いていくと、より文章が具体化していきます。

 

 陰は日陰という意味が含まれるので、暗い、寒い、夜などのイメージになり、陽は日なたという意味が含まれるので、明るい、熱い、昼間などのイメージになります。人が生きている状態は体温が存在していることになるので、「生命は温かい」という考え方を加えて、先ほどの文章を修正すると、「人が生きている状態は陽、人が死んでいる状態は陰」になります。

 

 「人の生死は気によって決まる」という真理から、陰陽を組み合わせていくと、文章が具体化しますが、これは分類を取り入れたことで生じる現象です。東洋医学では、他にも「三才」「五行」という概念を使っていくことができるので、さらに詳細な分類にしていくことが可能になります。

 

 では、身体の構造を東洋医学の思想で考えていくとどうなるのかを次で考えてみたいと思います。

 

4.3本の管と気血津液

 人は食事と呼吸をし、身体に何かが巡ることで生命が成り立っているのは観察していてもわかることなので、人の生命を支えるのは3つ必要だと考えたのか、自然観察の概念から作りだしたのか分かりませんが、東洋医学では身体には気・血・津液という3つがあります。

 

 気には身体を動かす力があり、血が身体に栄養を与え、津液は身体にある水分になります。血と津液は身体の中にある水ですが、血は血管の中にあり、津液は全身隅々に存在していることになります。

 

この3つと3本の管は同じ3という数字ですし、生命の根本として考えていくことができるので、相互に関係があります。

 

 気管は空気中にある物を身体に取り入れ、身体に不必要な物を出す働きがあるので、「気」と関係し、血管は管の中を流れる赤い液体なので「血」と関係していきます。津液は身体の全身隅々に存在しているのですが、津液を摂取していくのは消化管になるので、消化管と「津液」と関係していきますが少し分かりにくいかもしれないので、少し説明を加えますね。

 

 この世界は、上でもある天があり、地球という地面があり、間に人があって成り立っているという天地人三才思想(てんちじんさんさいしそう)という考え方が東洋哲学にあります。

 

 三才の考え方に陰陽を組み合わせると、陰が下、陽が上になるので、天の陽と地の陰の間に生きているのが人であり、天の力(日光、空気)、地の力(水、栄養)によって人が成り立っています。

 

 そのために、空気と関係をする「気」を気管、水と関係をする「津液」を消化管、血液と関係をする「血」を血管として分類しました。天地人三才思想に関しては過去のブログで書いているので参考にしてみてください。

「天地人三才思想とは」

 

5.3本の管と気血津液を合わせた治療

 単純に気管の問題、血管の問題、消化管の問題があれば気血津液を考えて治療をするという考え方でもいいでしょうし、病態を考えた上で治療方法を変えていくのもいいのではないかと思います。

 

 「気」と関係をしやすい気管は人体の上部にあり、外からの力にも抵抗をするように出来ているので、喉が重要な場所になるので、病が「気」の問題として生じることが多いと考えるのであれば人体の上部で治療をすることができるのではないでしょうか。

 

 「津液」と関係をしやすい消化管は人体の中部にあり、消化吸収の働きが大切になるので、腹部が重要な場所として考えることができるので、体幹の下部である腹部で治療をすることができるのではないでしょうか。

 

 「血」と関係をしやすい血管の中央は胸にあるので、体幹の上部、喉と腹部の位置関係で考えれば中央になる、胸部で治療をすることができるのではないでしょうか。

 

 または、人体をもっと大きく部位分けして考えれば、頭部から喉、喉から下腹部、下肢と分けて考えることができるので、頭部から喉の治療にたいしては「気」として考えて気管を治療の中心にすることもできそうですね。

 

 喉から下腹部までは、消化したものを栄養として送る働きになるので、「血」として考えて治療することもできそうですね。水は下に流れる性質があるので、人体の下部と関係をしやすいので、津液と関係をしやすい消化管の問題が生じているのであれば、下肢から治療をしていくこともできそうですね。

 

6.まとめ

 人体の構造には、まだまだ多くの管が関わっているのでさらに細分化をしようと思えばできますが、そうなってくると、病態の鑑別が複雑になり、治療体系としても複雑になっていくことになります。

 

 どういった治療のシステムで考えていくのかは、治療者が独自に考えて決めていくことも大切になってくるので、どなたかの治療の参考になれば嬉しいですね。

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