東洋医学ではストレスは肝に影響を与えやすく、ストレスがかかると肝の障害を起こし、肝の病証を引き起こすと言われますが、どのように発生するのでしょうか。
1.ストレスとは
ストレスとは、身体や心に影響を与える物になるので、ほとんどの物がストレスとしての働きがあります。例えば、好きなことをするというのも、精神的な高ぶりが生じるので、身体に対する働きかけがありますし、温度が高いと身体に負担をかけてしまいます。
完全にストレスがないという状態は、外界の気温や湿度が快適で、何もしていないような状態ぐらいになってしまいます。
一般的に言うストレスは、精神的に辛い、嫌なことがあるということが多いので、精神的なストレスについて言うことが多いですね。
ストレスは身体に悪いと考えることが多いでしょうが、ストレスがないのも身体には悪影響になります。例えば、スポーツで何かが上手くなりたかったとしたら、下手な時期を乗り越えることが必要ですし、心肺機能の向上には身体が耐えられるギリギリのところまでストレスをかけることになります。
精神的なストレスも乗り越えたことで、心が強くなり、経験として蓄積されるので、物事に動じずに冷静な判断を過ごせるようになるので、ストレス=悪ではないです。
2.肝の働き
東洋医学では、全ての物が自然の力と関係をしているということで、自然の働きの監察した結果を身体にも当てはめていく考え方があり、陰陽と五行で表します。陰陽は物事を二つに分けることができるという考え方で、五行は人の生活に必要な木火土金水という5つの物質になります。
木は陽の働きが強く、五行では木に対応していきます。木は自然にある草木のことであり、伸びて成長する性質が強いので、木も同様に上へ上へと伸びやかな性質があると考えていきます。
伸びやかで広がる性質があるので、身体の機能としては、気が全身に巡り、身体の機能全般に関わるのが、肝の働きになります。東洋医学では、この働きのことを疏泄(そせつ)と表現をしています。
疏泄の機能は、全身の働きを調節したり、消化吸収を行うと考えている脾胃の補助したり、生殖器の機能させたり、胆汁の生成や分泌させたりすると考えています。
肝の働きには疏泄以外にも、血を貯め込むという蔵血という機能があり、肝に血が収まっていることで、目や筋が正常に働けると考えていきます。
肝の働きについては過去のブログでも書いているので、こちらを参考にしてみてください。内容的は専門的な物を含みます。
「肝の働き」
「疏泄の意味」
3.ストレスと肝
ストレスは悪ではないですが、精神的なストレスが貯まり過ぎてしまうと、身体の機能に影響を与え、肝に障害が発生をするというのが東洋医学的な考え方になりますが、どうやって生じるのかを考えてみたいと思います。
精神的ストレスを考えるということは、東洋医学で精神をどう考えるのでしょうか。
人は、身体があって、心(こころ)があって成り立つというのが根本なので、心(こころ)と関わるのは、臓では心(しん)になります。心は神志(しんし)という働きがあり、これは精神や意識と関係しているので、人の心(こころ)の根本とも言えます。
人は精神だけで存在しているのではなく、感情がありますが、感情は精神があることで成り立つので、精神の大本が心(しん)で、感情が出てくるのは、心(しん)を包んでいる保護膜の心包(しんぽう)が感情を出すと考えています。
生みだされた感情はそのまま表に出してしまったら問題ですよね。小さい子どもであれば、感情のまま行動したり、話をしたりしてもいいでしょうけど、大人から感情コントロールをすることを指導されますよね。
この感情を調節する働きが肝になるので、精神的なストレスがかかると、肝が感情を制御し続けないといけなくなるので、負担が増え、肝の病証が発生すると考えます。
例えば、水槽で酸素がブクブクしていますが、これを東洋医学的に考えると、酸素を出す根本のホースが心で、アワが心包の働きになります。人の感情は表に出ている物だけではなく、絶えず湧きでている物ですね。
水槽では、上が空気に触れているので、アワは外側に放出されることになりますが、感情をそのまま表に出すことができないので、水槽の水面ちょうどに蓋がされている状態なので、そのまま放置をしてしまうと、水槽は酸素が増えてきてしまうので、いつか破裂してしまうことになりますよね。
肝の働きはこの蓋の役割をしていて、出していい物だけを表に出し、それいがいは出さないように調節している働きになります。こう考えると、肝は心や心包から出てきたものと、外部との調整を図るので中間管理職みたいな感じですね。
外に出せないのがストレスなので、ストレスが生じると、湧いてくる感情を処理していかなければいけないので、ストレスは肝に負担をかけることになります。
ストレスがたまると、感情を出す場所がないので、場所を変えてから感情を出すか、その場だと、ため息(太息:たいそく)として出てくるので、ストレスがあるときは、ため息が出やすく、ため息は肝の問題として考えていきます。
外に出すことができない状態が続き、ため息でも処理できなくなると、身体の中に湧いた感情を体内の押しとどめることになるので、お腹にガスがたまってしまい、お腹が張ったような状態が続きやすいと考えるので、肝が原因の症状として、慢性的なお腹の張りが生じてしまいます。
ストレスと身体については過去のブログでも書いているので、参考にしてみてください。
4.ストレスからくる肝の治療
肝の治療ということでは、肝経を使用して治療するか、肝の状態に合わせた漢方薬を使用するのがいいでしょうけど、一般の人が対処するのであれば、頭頂部をほぐすようにすると肝の問題を軽減していける可能性があります。
肝と繋がっている肝経(かんけい)は頭頂部まで繋がっているので、肝の問題は頭頂部に出ることがありますし、頭頂部に刺激を加えると肝に刺激を加えられると考えるのが経絡なので、ストレス軽減に頭頂部を自分の手でマッサージするのがいいでしょうし、刮痧(かっさ)を使用するのもいいですよ。刮痧については過去のブログを参考にしてみてください。
治療をする側の人の視点からしたら、肝経は胸脇部に走行しているので、胸脇部の経穴を使用するのもいいのですが、胸脇部は肺が下にある場所なので、鍼を刺入するのであれば水平刺か切皮だけになりますね。切皮だけと言っても体動や衣服・タオルなどの接触によって入ってしまうことがあるので、注意をしておかないといけない場所になります。
湧き出る感情を調整することで肝に負担が生じてしまうので、自然の中に一人でボーとすると、湧きでる感情を調節しなくていいので、一人で行くのもいいでしょうね。温泉にでもついでに入って、部屋で何もしないでボーとしているのも、湧きでる感情を調節する肝を休ませることになるので、リラックスは大切ですね。
5.まとめ
ストレスは伸びやかな性質を持つ肝の働きを低下させてしまい、身体に不調が出てくると考えていくので、私もストレスがかかったなというときには、頭頂部を刺激したり、胸脇部を自分でマッサージしてみたりしています。
自分の時間も大切になるので、一人ってきりの時間で何もしない時間を少しでも作るようにして心を落ち着かせることも多いですね。たった5~10分でもいいので、あるがままになってみるというのは大切なことだと思いますよ。