身体の体質は昇と降

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 東洋医学では身体の状態を決定するのに、証(しょう)を決定するのですが、証を決定していくためには、いろいろな証を覚えておかなければいけないので、知識が貯まるまでは、なかなか難しいと感じるのではないでしょうか。

 知識が貯まるのを待っても、使い慣れないといけないので、ある程度の知識と経験が必要になりますが、最初の段階では、出来るだけシンプルに物事を考えていくことが大切になります。

 

 身体の体質はいろいろと考えていくことが出来るのですが、今回は「昇降」で考えてみたいと思います。

 

1.昇降と関係する症状

 昇降の異常と関係する症状はいくつもあるのですが、あまりにも多いと分からなくなってしまうので、上下に関する症状で健康な人でも生じやすい、のぼせる・冷えるについてと、便秘と下痢について考えてみたいと思います。

 

1)のぼせと冷え

 のぼせと冷えは、身体感覚で言えば、熱い・寒いで、健康な人でも少し体調が落ちたら、のぼせる(熱い)と冷えは感じるでしょうし、体調がよくない人は顕著に生じる身体感覚ではないでしょうか。

 

 のぼせる(熱い)ということは、身体には熱が存在し、熱は上に向かっていく性質があるので、上が暑くて煩わしい状態になってしまいやすいので、上の病として考えていくことができます。

 

 冷えは下から感じることが多く、下や末端が冷える感じになることが多くなることから下の病として考えていくことができます。

 

 体質的には暑がりか寒がりかで判定していくことができるので、暑がりであれば上の病を生じやすい体質として考え、寒がりであれば下の病を生じやすい体質として考えていくと東洋医学的な体質を考えていくことができますね。

 

 上の病であるのぼせが発生した場合は原因と治療を考えていかなければいけないですが、臓腑の働きの基本で考えていくと、五行では木・火に属する肝・心は上の病に関係しやすいといえます。

 

 木である肝は上に伸びる性質が強いので、肝の働きに障害が発生すると、上に病が生じやすくなるので、頭痛・眩暈は肝気上逆と言われますよね。心の働きとしては上に昇る性質はないのですが、熱が存在すると、心にこもりやすく、さらに炎上してしまいやすい性質があるので、寒熱の熱が存在しているときは心の病と関係しやすい状態になります。

 

 熱の排泄は体表や排泄によって行っていくと考えていくことができるので、排泄に関与している腑を使用していくことができるので、小腸・大腸なども治療に用いていくことができるので、上焦と下焦で治療を行っていくことができます。

 

 臓腑で考えていかなくても、上に熱がこもってしまっているのであれば、上から熱を取る、下に熱をひくと考えていくことができるので、上下の治療の有用性があります。

 

 下の病である冷えが発生した場合は臓腑の基本で考えていくと、五行の水に属する腎が重要になっていきます。冷えが生じている場合は、腎の機能が低下していると考えていくことができるので、腎と関係しやすい下腹部を治療ポイントとして考えていくことができますし、下肢を治療に加えていくことができますね。

 

 熱を全身に送るのであれば、様々な物を全身に送っていく、心や肺の機能も重要になっていくので、上に治療を加えていくことができます。

 

2)便秘と下痢

 便秘と下痢は健康な人でも、最近は少し便秘気味かも、軟便気味かもというのはあるので、日々の生活による微妙な変化を含め、体質を把握するのに便利な症状の一つです。

 

 便秘は下に降りることができなくなってしまった状態になるので、上に向かっているので、上の病として考えやすく、下痢は下に降り過ぎてしまっている状態になるので、下に向かっているので下の病として考えていくことができます。

 

 食べた物は一定時間体内で滞留することで消化・吸収が行われ、正常な排泄になるので、異常なほどに長い時間滞留してしまえば便秘、身体に滞留することができなければ下痢として考えていけます。

 

 健康な人でも生活・食事によって便秘や下痢になってしまいますが、どちらが発生しやすいかを尋ねておくだけでも上下ではどちらの体質であるのかを考えていくことができます。

 

 便秘や下痢は日々の生活の中で生じることが多い物なので、慢性的にないまでも、どちらになりやすいかの傾向だけは出ると思います。排泄に全く異常がないという人でも、便秘か下痢のどちらか少しは経験していることがあるので、体質を上下で考えていくきっかけになります。

 

 排泄に関しては便秘が発生しやすいのは、胃と肺によって生じやすい物の一つです。胃は食べた物を消化して降ろしていく働きがメインですし、肺は呼吸という活動の中で、下へ降ろす力があるので、胃と肺の機能が低下すると降ろすことができずに滞留してしまうことになります。

 

 下へ降ろす働きが低下しているのであれば、胃・肺を利用して下へ降ろす働きを高めていくのもいいですし、下へ治療を加えていき、降ろす方に引くという考え方で治療をしていくことができるので上下を利用して治療していくことができます。

 

 下痢が発生しやすいのは、脾と腎によって生じやすいです。脾の働きは上へ昇らせる機能があり、食べた物が早く出てしまわないようにしている機能になります。地球上では重力があるので、上から入った物は下へ落ちるのが正常ですが、一定期間身体の中に滞留しておけるのは脾の働きが機能をしているからです。

 

 腎は小便・大便口である二陰と関係をしやすいので排泄の異常は腎との関係が密接です。産まれたて・亡くなる前は排泄をとどめておくことができなくなり、外へ出てしまうのでオムツが必要になりますが、これは腎の留めておく機能が低下してしまったことによって生じます。

 

 下へ落ちやすい状態ということで、下に治療を加えていくことができますし、上へ引くという考え方で上から治療を加えていくことができるので、上下を利用して治療を加えていくことができます。

 

2.上下運動に対する治療

 もっと簡潔に上下運動に対して治療を加えていくのであれば、位置として上下に存在している臓を中心に治療を加えていくことができますし、陰の性質を持つ臓を下、陽の性質を持つ臓を上として上下の治療として加えていくことができます。

 

 位置の上下と臓では、上は肺と心であり、下は腎と肝になります。性質から考えていくと、陰という降ろす働きと関係しやすいのは肺と腎であり、陽という昇る働きと関係しやすいのは心と肝になるので、どちらの考え方で治療をするのかによって使用する臓が変わります。

 

 これは絶対の真理と言う訳ではなく、自分がどうやって身体を考え、治療をしたかという軌跡になるので、軌跡があれば治療効果が出たのは、この軌跡のおかげであり、他の人に利用することができますし、治療効果が出なかった場合は、軌跡を修正していくことで治療を変えていくことができます。

 

3.まとめ

 体質・弁証を出すというのは非常に大変で東洋医学を使うのを諦めてしまう人がいるでしょうが、物事はシンプルに考えていき、そこから複雑化させていく方がいいので、簡潔に言えば陰陽論の2つで分けて考えていくのが大切になると思いますよ。

 

 治療に関しては、のぼせ・冷え、便秘・下痢でも上下どちらを利用して治療していくことができるので、治療の土台としてはシンプルに全身に配穴しておき、必要に応じてポイントとなるツボを選ぶのもいいのでしょうね。こういった考え方は全身調整穴という考え方にもなるので、過去のブログを参考にしてみてください。

「全身調整穴」

「東洋医学の治療は全身調整」

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