肺の働きと陰陽―肺の基本は降の働き

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 肺の働きは宣発・粛降があり、上下内外の働きに関係する性質がありますが、本質的な働きは「降」に関係をしています。東洋医学の考えでは、陰と陽は相互に補完し合う関係になるので、「降」というのは「昇」にも影響することになり、「降」は陰であり、「昇」は陽になるので肺の働きには陰陽があることになります。

1.肺の働き

 肺は胸中にあり、左右に分かれて存在していますが、気管で一つに繋がっているので、構造的なイメージとしては、枝がありそこに何かが付いているので、ブドウのようですが、粒ではなく、大きな塊なので、花びらのようですし、臓腑の中では一番上に存在していることから、華の蓋ということで「華蓋(かがい)」という別名があります。

 

 肺は鼻に繋がっているので、自然界の清気を吸入する働きがあり、入れるだけではなく出すのにも関係するので、肺は呼吸に関係しています。呼吸は外気と触れる行為であり、外気は外邪が存在しているので、外邪は肺に吸入されることになり、外邪に侵襲されやすい性質があります。さらに、肺は皮毛(ひもう)と関わり、体表と関係をしていて、体表も外気(外邪)の影響を受けやすいところなので、肺は外邪の影響を受けて障害されやすいので、弱い臓という意味の「嬌臓(きょうぞう)」と言われます。

 

 肺は呼吸と関係するので、呼吸を主る(つかさどる)と言われ、呼吸によって宗気の生成に関与しているので、気を主るという主気(しゅき)という機能があります。

 

 肺の呼吸の働きを観察してみると、身体が大きく広がる動きと身体が小さく縮む動きによって成り立っているので、肺の活動は外・上へ広がる宣発(せんぱつ)と内・下へ降りる粛降(しゅくこう)があります。

 

 宣発と粛降は動きと関係するので、身体の機能で言えば、活動は「気」と関係し、肺は宗気の生成と関与をしているので、宣発と粛降は「気」と関わります。「気」は実体としてイメージするのが難しいところですが、身体の水も同様に全身に循環しないといけないので、宣発と粛降には身体の中の水分である津液(しんえき)の輸送にも関与しています。

 

 肺の機能によって水が全身に循環しているので、肺は水の循環調節を行っているということに関しては、「通調水道(つうちょうすいどう)」という名前で言われます。肺の機能が低下すると、水の循環に障害が発生してしまうという考え方から、肺の機能低下によって浮腫みや排尿障害が発生することになります。

 

2.肺と陰陽五行

 肺は五行では金に属し、金の性質は従革(じゅうかく)であり、清潔・縮む・下降という特徴があります。従革は「従順に改める」という意味があり、金属が人の手によって形を改め道具が出来る様を意味しています。金は金属であり、冷たく光る性質があるので、白と関係し、冷たいので、「殺」というイメージになるので、「木の生」と対応しています。

 

 肺は陰陽で考えていくと、五行の性質から「木の生」という生命・活動という陽と対応するので「陰」になり、上焦(じょうしょう:胸部)という身体の上である陽と対応していますが、上焦には肺と心という2臓があり、肺は「陽中の陰」であり、心は「陽中の陽」になります。心は五行では火に該当し、上に昇りやすい性質があるので、陰陽で言えば陽に対応し、肺は五行では金に該当し、降りる性質があるので陰に対応します。

 

 五行の関係でも、身体の構造という上焦の関係でも肺は陰と関わりやすいので、陰と関係が深い臓だと言えます。

 

 金は水を生み出すものになり、水は陰と対応するので、陰を生み出すと考えることもできます。肺は上焦で水を生み出して、水は下に下降する性質があるので、下焦に向います。下焦では、腎が水と対応しているので、金である肺は腎の母であり、水の生成と輸送においては重要な働きがあります。

 

3.肺の昇降

 肺の機能は水との関係性があるので、水を下に輸送する働きがあると言え、さらに水は全身に必要なので、全身に輸送する働きがあります。水を全身に輸送するためには、下だけではなく、上や横にも移動させなければいけないために、水という陰に動きを与える動である陽の働きを持ちます。

 

 身体は一つの箱であり、中にあるものは満ちた状態になっています。そのために何かが動けば、他も動くことになるので、降の機能は、昇の機能にも影響が出るので、肺は上下の昇降に関与することになります。

 

 肺の昇降については、活動を加えて行く必要があるので、木の働きのサポートを受けているので、肺の昇降では、肝の昇降という活動力と協調して働くことになります。

 

4.肺の機能と陰陽

 肺の機能は、水と気に関係するので、水は陰、気は陽として考えることができるので、肺には陰陽が関係しています。肺が関わる呼吸活動は、陰陽で言えば、動きとも関係しやすいので陽との関わりが強くなります。

 

 呼吸は取り込むということでは陰ですが、清気である陽気を吸入するので、肺は陽気が絶えず補充されているので、気の不足が生じることがありますが、水は絶えず生み出し続けなければいけないので、水が不足すると、気の滋養をすることもできなくなります。

 

 気が不足してしまえば、水を生じにくく、水が不足すれば、気が滋養されなくなってしまうので、肺の陰陽の障害は、相互に影響してしまうので、長期化してしまうことになります。

 

5.まとめ

 肺の機能を考えていったら、降と言う陰との関係が深く、他にも影響しやすいところなので、ちょっと調べてまとめてみました。まだまだ完全な理解とは程遠いですが、肺の機能障害である咳が長引いたりするのは、陰陽の障害と結びつきやすいのかなと感じましたね。

 

 風邪が治っても、夜中に咳が続く、咳が止まらないという状態が発生しますが、これは、気の障害から水の障害につながり、気の滋養も低下するので、よくなるまで時間がかかるのではないかと思えました。

 

 こういう視点で考えていくと、病能にも細かく気血津液を入れて考えることが出来るので、病能に時間軸をいれて考えていくようにしたいなと思いました。

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