ツボを発見する

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 ツボは全身で361あり、昔から使われてきて何に効果があったのかがまとまっているので、治療のデータベースと言えます。健康情報誌でも、治療家用の書籍でも、このツボは何に効果がありますと書かれているのは、このデータベースの知識になります。

 鍼灸の資格を取る際には、学校でツボの学習をしないといけないのですが、ツボは361もあり、全身くまなく分布しているので、ツボを覚えるのが鍼灸師にとって最初の難関と言えます。

 

 鍼灸師と按摩マッサージ指圧師は東洋医学を専門的に学習する唯一の資格ですが、日本の医療は現代医学を中心で組まれているので、現代医学の学習も非常に多く行わないといけないです。

 

 国家試験はツボの試験でもいいのでしょうが、それだと日本の医療という資格、現在の医療の資格としてそぐわないので、現代医学の学習が非常に多いです。近年の国家試験を眺めてみても、東洋医学の知識を確認するのもありますが、試験内容の現代医学的な知識が70%、東洋医学が30%程度なのかなという印象ですね。

 

 ツボを学習する教科書は『経絡経穴概論』になるのですが、内容はツボの名前、位置、筋肉、神経、血管になるので、ツボの効果についての学習がない状態になっています。学校独自で少しは学習しているとは思いますが、国家試験に出題される訳ではないので、鍼灸師の学習としてはツボに対する知識は非常に弱いと思います。

 

 しかも、ツボは知っているだけではなく、正確に触っていけないといけないのですが、身体に対する知識も習得するのが大変なので、卒業してすぐに正確に触れるというのは非常に難しいのではないでしょうか。

 

 さらにツボを正確に触れられたとしても、鍼も手技も的確に刺激を加えられないといけないので、知識と触る技術、刺激を加える技術が必要になります。

 

 私は学生時代にツボは大体覚えていたのですが、実際に身体を触れるとなると、意外と正確に触れていないのがよくわかりましたし、効果を上手く導きだせないことが多かったです。しっかりと覚えていたつもりでも、忘れていたり、勘違いしたりしていることも多いですし、技術の問題もあるので、治療効果を出すのは難しいなと思っていました。

 

 治療をしていると、うまくいったもの・ふつうなもの・反省が必要なものと分かれていきますが、ある時期に一定のツボに拘って使っていると、今までの治療から考えると異常なまでの効果を実感することがあります。

 

 例えば、合谷は有名な場所なので鍼灸師にとっては当たり前なところですが、ドンと響きも感じやすいので苦手な人も多いのではないでしょうか。合谷をしばらく使い続けていったのですが、しばらくすると切皮・少しの刺入で筋の躍動が生じ、反応が大きく出る経験をして、その場所に刺すといいのではないかと思ってやり続けていきました。現在は、合谷はすぐに取穴できるし、躍動を生じることも多いですし、響きのコントロールもできるようになってきましたので、続けてやることで、自分の中で知識と技術が消化でき、合谷というツボを発見したという感覚になりますね。

 

 継続して使っているうちに自然に身についたツボもありますが、このツボはどうなのかなと考えて、工夫をしながら使ってみて、これがこのツボの効果と発見することもあるので、治療をしているときに、普段は使わないツボも入れていくのは、発見をしたからなのかなと思っています。

 

 もし、これがツボじゃなくて、場所、圧痛などで取ったのであれば、その刺し方や効果が経験として蓄積されるので、奇穴になっていくのではないでしょうか。

 

 私自身は、経穴の361も使いこなせていないですし、奇穴も多くあるので、新たなツボの発見をしようという気持ちにはならないですね。まずは、361あるツボの効果を知識だけではなく、自分なりに発見して、その先にいけるのではないのかなと思っています。

 

 いつまで生きているのかわからないですが、終わりがないような気がしますね。終わりがないから、続けられるし、変わり続けていけるのは鍼灸師、治療家としてはいいことなのだろうなと思っています。

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