東洋医学は、現代医学とは違う用語で、違う概念で考えなければいけないので、頭の中にしっかりと内容を入れて、患者さんの話、身体の状態を理解しておかなければいけないので、東洋医学の治療をしたいという人に取っての難関は知識ですよね。
鍼灸師の場合は、学校で東洋医学を学習していきますが、それ以外の方は、ゼロから知識を得て勉強していかなければいけないので、知識を入れながら、噛み砕いて理解していかなければいけないので大変ですよね。鍼灸師の場合は、学校で順番に習っていくので、自分でも勉強を勧めていくのであれば、こちらのブログで書籍を紹介しているので、見てみて下さい。
1.東洋医学で考える身体の機能
1)気血水
東洋医学は、身体の中に気血水が流れていて、この気血水の異常によって症状が発生するという考え方になるので、身体の気血水の状態を理解していく必要があります。水は正確には津液(しんえき)と表現していきます。
この気血水以外には、精、陰、陽があるので、以下のようにイメージしてしまうのもいいのではないでしょうか。
- 気:身体の機能
- 血:身体の営養
- 水:身体の滋養
- 精:生命、生殖、成長
- 陰:冷やす力
- 陽:温める力
これらの物が少ない場合、多い場合として考えていくので、それぞれの機能と働きを理解していくことは大切になっていきます。気は、身体の機能、動きと関係していくので、疲れやすい状態だと不足している(虚)と考えていくことができ、気が停滞して実の状態になってしまっている場合は、お腹が絶えず張って苦しくなってしまうことがあり、ため息が出やすくなります。
血は身体を栄養していく働きなので、不足してしまうと、足がつってしまったり、筋肉がケイレンしてしまったりします。血の流れが悪く停滞している状態は実が生じてしまっているので、サメ肌、血色が悪く黒っぽくなる、月経には塊が多くなってしまいます。
水が不足している場合は、喉が渇くようなことが多いので、身体に熱があるときに生じてしまうことがあります。水が停滞している状態は痰湿(たんしつ)という状態になってしまっているので、浮腫み、身体の重だるさ、下痢が生じてしまいます。
陰陽は身体の寒熱バランス調整に関係しているので、陰が不足すれば冷やすことができないので、身体が熱くなってしまい、これを陰虚(いんきょ)といいます。陽が不足すれば温めることができないので、身体が寒くなってしまい、これを陽虚(ようきょ)といいます。
寒熱バランスでは、外が寒い、外が暑いという状況から発生してしまう場合があるので、外が寒い場合は陰盛、外が熱い場合は陽盛の状態になり、身体の状態を尋ねながら、気血津液精陰陽では何に問題があって、虚と実はどちらかを考えていくことになります。
2)臓腑
東洋医学の独特な概念としては気血水がありますが、それ以外に、臓腑の概念があります。臓腑は東洋医学独特な概念で、現在ある臓器の名前と同じ物もありますが、現代医学の病名とは関係がないです。ただ、症状として現れるのが、現代医学の病名と近い場合が多いので、説明として利用されることもあって意味が分からなくなってしまうことが多いのではないでしょうか。
基本的には、身体の気血水などはこの臓腑の働きによって調整されているので、臓腑の問題が気血水などの問題となってしまうので、気血水と臓腑は複合的に考えていかなければいけないので、最初の段階ではここの複合させるところで力尽きてしまうのではないでしょうか。
ちなみに、私も最初の頃は、どちらも理解できない上に、複合なんてとても出来ないと思っていたのですが、気付けば、こうやって文章にしているので、成長したのだなと実感しています。
臓腑のイメージはそのまま症状とも関係していきやすいので、症状と関連付けてしまうのもいいですね。
- 肝:ストレス、頭痛、慢性の腹痛、月経異常、筋肉
- 心:不眠、精神、胸痛
- 脾:消化器症状、下痢、内臓下垂、出血
- 肺:呼吸器症状
- 腎:生殖、泌尿器症状
- 胃:悪心、嘔吐、便秘
肝は感情・月経などの調節に関与しているので、肝の問題は様々なところに生じてしまいます。気血水と同じように虚実を合わせて考えていくことができるのですが、肝の不足である虚は、眼精疲労、足がつってしまうようになったり、月経が遅れ月経血が少なくなったりしていきます。肝の実だと、慢性的にお腹が張って苦しい痛み、頭痛、イライラが生じやすくなります。
心は精神の働きに大きく関与していくので、睡眠障害にも繋がっていきやすいです。心は胸にあるので、心の障害は胸痛として生じることも多いです。心の虚は不眠でも途中で起きてしまったり、顔色の血色が悪くなったりし、心の実は不眠だとなかなか眠れない状態が生じやすくなります。
脾は消化や吸収と大きく関係しているので、脾の問題は消化器系が生じることが多いです。脾の機能は内臓の位置調節ということで、上に持ち上げていく働きがあるので、脾の機能が低下してしまうと、内臓下垂や下痢が生じてしまいます。脾は気血水を生成するところでもあるので、虚は生じやすいですが、実は生じにくい傾向があります。
肺は呼吸器と関係しやすいので、肺の問題は呼吸器系症状が生じやすくなります。肺がだめになってしまうと、風邪をひきやすくなり、鼻疾患、皮膚疾患も生じてしまいます。肺の虚は、呼吸器、皮膚疾患、鼻疾患になりやすく、肺の実は風邪と関係しやすくなるので、風邪のときの鼻疾患は、肺の実から生じていると考えていくことになります。
腎は生殖・泌尿器と関係しやすいので、腎の問題は生殖・泌尿器が生じやすくなります。生殖・泌尿機能は生命の成長とも関係しやすいので、成長障害・早期老化は腎の問題として考えていくことになります。腎は生命と強く関係していきやすいので、腎は虚が多く、実はあまり生じない傾向があります。
胃は飲食物を入れる袋になりますが、袋が機能しないと、飲食物が入ることが出来ないですし、袋から上手く出て行かないと、便として排泄することができないので、胃の働きは飲食物を口から便まで降ろすのに関わっています。そのために、胃の働きが障害されてしまうと、飲食物が上に行ってしまう悪心・嘔吐、下に降りない便秘が生じてしまうことになります。
2.東洋医学で考える病能
現代医学では、症状に対して受診する病院(~科)を決定していきますが、東洋医学では、様々な症状がある「人」を捉えて行くことが重要になります。例えば、疲れやすいし、お腹の調子が悪いと言う人は、現代医学だと、「疲れやすい」は内科なのか、心療内科なのか、自律神経の異常なのかと考えていき、「お腹の調子」は内科になることが多いですが、東洋医学では、気血水だと「気」、臓腑だと「脾」と捉え、「脾の気に問題が生じている状態」として、その人のことを捉えていきます。
東洋医学では、症状ではなく、「証」を重視するというのがよく言われています。症状を構成している人の体質を「証」と呼び、「証」によって、臓腑・気血水への治療を行っていくので、東洋医学の本質の治療は「症状ではなく証」と言われている理由です。
東洋医学で病能を考えていくには、気血水だと、どういう問題が生じているのか、臓腑だと、どこでどういう状況になっているのか考えていく必要があり、この気血水の状態と臓腑の状態を合わせた物が東洋医学で考えていく病能になります。
この他には、環境によって問題が生じてしまう場合、体質によって問題が生じてしまう場合があるので、病因(病が生じる原因)の中にある、六淫(ろくいん)・六気(ろっき)・外邪(がいじゃ)に対する知識もあると、病能の変化も理解していきやすくなります。
外邪は、六淫と言われるので、風寒暑湿燥火あります。生じさせる症状は、大まかには以下のようになります。
- 風:いろいろな病を生じる、風邪症状、ふるえ、痒み
- 寒:冷え、痛み、ひきつり
- 暑:発汗させる、暑い
- 湿:食欲低下、下痢、浮腫み、分泌物増加
- 燥:乾燥
- 火:出血、ふるえ、腫瘍
これ以外には、食事や睡眠不足、激務などの生活習慣で生じる場合があるので、その「証」がどうやって生じたのかを理解していくためには、病因という原因をしっかりと把握しておくことが必要になり、予後指導のためにも重要になります。
3.東洋医学の治療
東洋医学の治療では、気血水に対する考え、臓腑に対する考え、病因の考えを組み合わせて治療・予後指導をするのが東洋医学と言えるので、知識をしっかりと付け、理解し、応用していかなければいけないので、東洋医学の学習は簡単にはいってくれないですね。
一般の人と専門家の違いは、専門知識を身に付け、利用していくことが出来るということでもあるので、知識を付け、理解していかなければ東洋医学を使っていくのは非常に難しいところですね。
専門家でも初心者のときはあるので、初心者のときにはどうするかというと、上級者の真似をするのも大切ですが、上級者は知識と技術があって成り立っているので、マネをしているだけでは身に付けるまで時間がかかってしまうので、出来るだけシンプルに考えていくことが必要です。
東洋医学では、気血水、臓腑、病因という3つが重要になりますが、自分の理解が深まったところだけで治療を組み立てていくこともできるので、まずは特異な物を一つ作り、それだけで考えていく方がいいです。
例えば、日本語だと、平仮名、カタカナ、漢字と分かれていて、日常的には、全て混ぜて文章を作っていますよね。これはかなり複雑なことなので、子ども、外国人に取っては非常に難しいところです。
では、小さい子どもや外国人はどうするかと言えば、平仮名、カタカナのどちらか、または漢字であれば、必要な物だけを利用していけば簡単な文章を作ることができますよね。平仮名で書いた文章は日本語として間違っていますか?
間違いではなく、読みにくいという問題だけですよね。東洋医学の治療もこれと同じで、一部に強くなると、奇麗な物を作ることはできませんが、基本は合っているので治療としては正解になります。
東洋医学の治療では、鍼・漢方・あん摩がありますが、気血水、臓腑、病因という概念を使って、身体のことを考え、気血水・臓腑・病因を変化させることで全身の状態を整え、変化させていくので、どこから始まっても治療としては成り立っていきます。
もちろん、全体として把握していくのは大切なのですが、全体を把握して整理するのは時間がかかってしまうので、初心者のうちは、出来るだけシンプルに考えていき、幅を広げていくことが大切だと思います。
東洋医学の治療をしていくためにはというブログは過去にも書いているので、参考にしてみてください。いろいろな人の意見を聞きながら、自分が腑に落ちたものをやっていけば、道はそのうち開けていくと思いますよ。
4.まとめ
簡単に書こうと思っていたのですが、いろいろと説明を加えていったら、かなりな長文になってしまいました。読んで頂いた方は疲れてしまいましたかね。東洋医学の専門書でも特に漢方の方を見ると難しく感じてしまう人もいるでしょうし、鍼灸の方でも、難しく感じてしまう人がいるかもしれませんが、気血水、臓腑が相互に影響を及ぼしてしまうことも多いので、その点を理解していくためには、気血水、臓腑の基本をしっかりと押さえておかないといけないですね。
例えば、気の問題は血にも影響を及ぼすので、気の問題と血の問題が生じ、結果として、臓腑もいくつか絡んでしまうことがあるので、こういった複雑な状態もまずは、簡単で分かるところから入り、段々と変化させていくと思えば、気が楽になりませんかね?
私自身は、基礎をやり直してみて、考えたときに、完全な形を理解して使うのが難しいので、こうやってシンプルにしてみて、再構築を図っているところです。