弾爪(だんそう)という言葉があり、鍼を刺入した後に母指の爪で鍼を弾く方法ということで、かなり昔の説明を受けたことがあります。何となく、見た目がそれっぽくていいなと思って、以前は使っていなかったのですが、そういえば、何だったのだろうなと思ったので調べてみました。
1.弾爪のやり方
接触でも刺入でも押手を構えて鍼を持ったら、刺手の母指と示指で鍼を支えていきますが、示指の先端にゴミがついたのを親指の爪で弾き飛ばすような動きで鍼柄を弾くのが弾爪になります。
あんまり覚えていないのですが、弾爪をすると催気(さいき:気が流れてくるように誘導)したり、補気したりすることが出来ると聞いた気がします。あくまで気がするというのは、ちゃんと習った訳ではないですし、記憶があいまいなのですよね。
2.弾爪とは
今はネットが便利な時代になったので、弾爪とはで検索をかけると手技の補瀉というので出てきます。いくつかのサイトを見てみると弾爪の補瀉は、鍼を爪で弾くのが補法で、何もしないのが瀉法のようです。となると、通常に鍼をしている場合は、弾爪を選択しない人の方が多いでしょうから、全て瀉法なのですかね。
出典として『素問』離合真邪論篇、『難経』七十八難とあるので原文を見てみたのですが、どちらにも記載がないです。両者に共通しているのは、鍼をするときにはどうするのかというやり方で、その文章の中で、「鍼をする際には、ツボを触る際には押す、弾く、爪を使う」という記載での「弾」であって、鍼を扱う手技としての「弾」ではなかったです。
私の読み方が悪かったのかと思って翻訳本を何冊か読んでみたのですが、「弾爪の補瀉」には繋がらなかったです。
3.どこに弾爪があるのか?
ここまで調べたら、弾爪はどこが出典なのか気になったのですが、古典文献はいろいろありすぎて調べるのが大変なので、対象をしぼってみることにしました。中国の歴代文献は重要な物が沢山ありますが、1295年の『鍼灸指南』竇漢卿(とうかんけい)で発見できました。
原文
弾者、凡補時、可用大指甲軽弾鍼、使気疾行也。如瀉、不可用也。
おおっ、今言われている弾爪のことがそのまま出ていますね。『鍼灸指南』では、鍼の補瀉法についてまとめられていて、14のやり方が載せられています。これ以後の時代の書籍では、1529年の『鍼灸聚英』高武(こうぶ)、1601年の『鍼灸大成』楊継洲(ようけいしゅう)があり、弾くことについても記載が少し見られます。
詳細には読み込んでいないのでどういったことがあるのか分かりませんが、『鍼灸大成』では補瀉には十四あると言う記載があり、その中に「弾」も入っているので、『鍼灸指南』の考え方が入っているようです。
後の時代の書籍なので、前の時代でまとめらえたものを踏襲していることが多いので、利用されているのが当然かもしれませんね。では、『鍼灸指南』の前では「弾爪」という手技があったのかは分かりません。これは手持ちの書籍の少なさもあるので、仕方がないですね。
4.手技の多彩とくれば杉山真伝流
手技が多く書いてあるものであれば、杉山真伝流があるので、「弾爪」に似たような手技がないかざっと見てみましたが、近いなと思ったのは「気行術」ですね。ただ、これは示指と中指で挟んで弾くので、爪で弾くのではないので、「弾爪」ではないですね。
詳細に見ていけばあるのかもしれませんが、ちょっと疲れてしまったので、今後にまた調べようと言う気持ちになったら、見てみたいと思います。
『杉山真伝流臨床指南』
5.まとめ
普段、使っている、話していることは実はよく分からないというのはよくあることなので、「弾爪」について調べてみましたが、インターネットのように簡単に検索をすることができないので、非常に時間がかかってしまいますね。
もし、弾爪について調べたい人がいて、どこにあるのか分からなかったと言う人は、このブログの内容を踏み台にして、調べていかれると少しは楽なのではないでしょうか。古典も読みこなせる訳でも、読み込んでいる訳でもないので、正しいのかは自分でも分かりませんが、少しでも調べる方の参考になったら嬉しいですね。