症例11_解説と治療

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 症例11は脾胃湿熱による副鼻腔炎と考えることができます。病能としては、湿熱が強い訳ではないですが、もともとの身体の状態が脾胃の働きが停滞しやすく湿邪が阻滞しているので、外邪によって気血のめぐりが悪くなったのと、体内に阻滞している湿が熱化をして発症していると考えられます。

1.解説

 注目点は、昔に鼻血がよく出ていたということで、出血をするのは脾の統血が低下をした場合か、血熱になるので、昔から身体のだるさや大便の異常が生じやすいことから脾胃の問題が強いのではないかと考えることができます。

 

 副鼻腔炎は一度、症状が出るようになると、その後も反復して症状が発生することが多いので、体調の低下が生じやすい疾患になります。鼻水が出るようになり、黄色になり、その後、後鼻漏と言って、鼻腔から後方の咽喉に鼻水が流れていってしまうことによって咳が発生していきます。

 

 もともと鼻炎を起こしやすかったのもあるので、花粉症なども発生していたかを確認しておくと鼻がどれだけ悪かったのかを考えることが出来るものですし、普段から花粉症がひどい人は副鼻腔炎になる可能性もあるので、鼻症状は注意をしておくことが必要なものでもあります。

 

 足のだるさが生じやすい原因は、脾は肌肉と関係をしていて、四肢と関係をするので、脾の働きが低下をすると四肢のだるさが生じやすくなります。だるさや浮腫みは湿邪の下注・重濁性が影響をしていると考えることができます。脾の働きが低下をすると、湿邪の発生にもつながってしまうので、脾の働きが昔から弱かったのではないかと考えられます。

 

 眠たがるという嗜睡があったことから、脾の昇清が弱い状態が以前から見られていると言えます。入眠困難は血虚によっても発生しやすい症状の一つですが、脾の働きが低下をしていると、気血の生成不足が発生するので、脾の運化が弱いのではないかと考えることができます。

 

 脾の働きが低下をしていると、脾は痰湿を生じやすくなるので、生痰の源と言われていますが、その痰は貯痰の器である肺に貯まりやすいので、脾の働きが低下をすると、肺の症状である、咳嗽や鼻の症状が出てしまうことがあります。これは五行で考えると土が金を生み出せていない状態になります。

 

2.治療

 鼻疾患は治療後に改善をすることが多いのですが、持続的な効果が出るまでは非常に時間がかかるものになります。花粉症だと症状が増悪する数カ月前から治療をしていると、治療によって改善していくのが分かるのですが、花粉症のシーズンで治療を行っているだけだと、治療数日は悪くないという程度になります。

 

 継続して治療を続けると年によっての大きな変化を感じる疾患の一つですが、症状がないとなかなか通わないという症状でもありますね。

 

 脾胃湿熱になるので、脾胃の働きを強めるというのが基本の方針になるので、脾・胃経の経穴を使うというのが治療方針として大切になりますが、脾胃は腹部とも関係をしやすいので、腹部の治療も大切になります。腹部に関しては硬結を探してそこに鍼を刺入していくだけでも、改善をしていくことが多いですが、代表的な経穴であれば、中脘・天枢・関元(または気海)を使っていくと整えやすいです。

 

 鼻疾患では頭部と顔面部の経穴が効果的です。特に上星に関しては鼻疾患に非常に効果がある経穴になるので、透熱灸がいいのですが、直接灸を行うと髪が脱毛してしまうので、鍼で行う場合もあります。鍼の場合は、上星から鼻の方向に向けて刺入をして、少し雀啄をしていくと、鼻の通りがよくなってくることが多いです。

 

 迎香も鼻疾患に非常に効果的なところになるので、鍼を刺入するのが簡単な方法なのですが、顔面部なので出血リスクが怖い場合は、灸点紙を迎香に貼り、その上からお灸をすると火傷のリスクが低下をします。透熱灸が大変なようであれば、迎香に台座灸や知熱灸を使うのもいいと思います。

 

 寒くなってきて風邪をひきやすい状態で発生することがあるので、ちょっと寒くなってくるような、気候が変化をしたときに注意をしてもらうのが大切ですし、そういう時には必ず来院をしてもらうことが大切です。

 

 風邪をひいて悪化をしてしまうことが多いので、身体の外側である陽を強めるためには、陽維脈と陽脈の海と言われる督脈が交会する大椎も大切なので、治療の中で使うだけではなく、気候が変わってきそうなときは低温火傷に注意をしながら大椎にカイロを貼るのも効果的です。

 

 外側ということは陽維脈も大きく関係をするので、症状が出そうになったら外関も重要な経穴になります。

 

 鼻疾患は辛いということだけではなく、集中力も低下をしてしまうので、治療の中で改善していくことが出来ると、感謝をされやすいところになりますし、患者さんのためにもなるので、自分の特異な経穴や治療を持っていくのがいいですね。

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