数日前から、強い回転性めまいが始まって寝ているのも辛いと言われたらどうしますか?
今回は患者さんが来院してから、問診と治療をしていく過程について書いてみようと思います。症例にしようかと思ったのですが、症例の問題と解説では読んで終わってしまって、イメージが付きにくいのかなと思ったので、今回は問診を始めるところから、何を考えて尋ねていくのかという視点で書いていきます。
患者さん:30代後半、色白、中肉中背、状態が悪いためか元気がない。
私「めまいがひどいということですが、どういったときにひどくなりますか?」
患「横になるとめまいが強くて、あまりにひどいので、病院に行ったら良性とういめまい・・・」
私「良性発作性頭位めまい症ですね。」
患「そうです。仰向けに寝ているときに、天井が回転するような感じで、朝に起き上がると、めまいが続く感じがあります。」
私(良性発作性頭位めまい症ということは、大きな病気はないから原因が分からないということだから、現代医学的によく分からないということだから東洋医学的に考えると分かりやすいのでは?)
私(めまいは頭部・髄海と関係をしやすいので、肝・腎・脾・熱が関係をするな)
めまいを生じやすい臓に関しては蔵象の知識が大切になり、症状と蔵象も頭に入っている必要があります。
私(すごく色白だし、顏色も白いし、熱はなさそうだから、肝・腎・脾で考えるか)
私「いつからめまいが起きるようになりましたか?」
患「1週間前からめまいが起きるようになって、休んでいても改善しないのです。」
私(ゆっくりとしっかり話せるし、イライラしている感じもないから、腎か脾で考えようかな。ただ、色白で入ってきたときに前かがみのような状態だったからお腹の調子もよくないのかな?脾の質問をしてみようかな。)
私「最近はお腹の調子がよくないですか?」(お腹の調子はどうですか?だと何を聞いているのか分からないときもあるし、脾の問題として疑ったので状態を推測して聞いてみています。)
患「お腹の調子はよくないです。」
私(反応も早かったし、身体のことを推測してくれているという好意的な感じがあったので、この先も質問をしても大丈夫そうだな。脾の問題がありそうだから確定してみるか。)
私「食欲がなくて、軟便か下痢の状態になっていませんか?」
患「そうなのです。食欲がなくて、軟便気味です。以前は食欲があってかなり食べたりしていたのですが、1か月前ぐらいからか食欲が低下して軟便気味になったと思います。」
私(1週間前からめまいで、その前に食欲・便の問題が出ているので、食欲が旺盛で食べ過ぎが続いていて、脾胃の働きを低下させていったのかな?)
私「食欲が旺盛だったのですか。いつぐらいから旺盛だったのですか?」
患「出産をしてからは食欲が旺盛でよく食べていました。」
私(出産をしているということは気血の消耗があって、脾胃も回復しようとしたときに多くの食事が入ってきて回復できなかったのかな?出産は妙齢なので尋ねにくかったけど、出産しているのか。)
私「お子さんはおいくつですか?」
患「2歳になります。」
私「2歳だとかわいいでしょうけど、手もかかって大変でしょうから休む暇はないのではないですか?」
患「そうなのです。自分が休む時間を取るのは難しいですね。」
私(出産後に気血だけではなく臓腑に疲労があるときに、飲食によって脾の働きが低下していってしまったことによって脾の昇清が低下をして下に下る下痢と気血を昇らせられないめまいが生じているのかな。統血にも問題があるようであれば、月経が早くなったり、出血量が多くなったりするはずだから月経状態の確認もしておこう。)
私「最近の月経は早くなっていませんか?」
患「早くはなっていないです。今回は遅くなりました。ちょうど1週間前に月経がはじまって、もうそろそろ終わるところだと思います。」
私(ん?1週間前ということはめまいが起きたときと同じだな。月経周期は早くなっていないということだけど、血の生成が遅くて月経が遅れたのかな?統血の低下があれば出血量が多いはず。)
私「月経の量は多かったのではないですか?」
患「今回は多かったです。」
私(瘀血の確認もしておかないと)
私「月経血に塊がありましたか?」
患「なかったです。」
私(脾で考えてよさそうだけど、後は、脾は気虚・陽虚・陰虚があるけど、気虚もありそうだから陽虚で良さそうかな。陰虚だと痩せている傾向か加齢があるけど、そこまで痩せてないし、そこまで高齢でもないし、陽虚の確認をしてみよう。陰虚や陽虚についてはこちらを参考にしてくださいね)
私「手足が冷えたりしませんか?」
患「最近は足先が冷える感じがあって、芯まで冷える感じがあります。」
ということで、脾陽虚証だと考えたので、治療は脾経を使うのが中心で、上に昇らせる働きがある百会が重要だなと考えて施術に入りました。この症例はこちらの都合で鍼灸が出来なかったので、下腿部の脾経ということで脛骨内縁を指で揉みながら刺激をして、衝脈の八脈交会穴で脾経の絡穴である公孫も使いました。百会にも持続圧迫も指で加えて終わりにしました。
治療後は、寝ているときも起き上がったときも、めまいが生じましたが、回転性めまいの持続時間は直後で効果が見られました。たまたま上手くいった症例ですが、教科書的な弁証を出せる患者さんはたまにいるので、そういったときにしっかりと弁証を出せるように知識を入れておくことが大切だと思いました。
月経と同時に始まったのと、治療も加えて変化も出たので、今後はよくなっていくと思いますと伝えて終了しました。患者さんは“よくなるのか”を心配していることが多いので、見通しも伝えてあげると相手に取ってはいいと思います。
非常に教科書的な患者さんだったので、ブログにしました。尚、情報保護の視点から、年齢や症状、話し方などには手を加えています。