東洋医学でのがんの考え方

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 昨日のブログでは、がんの治療法ということで現代医学の話について書きましたが、東洋医学の考え方について書くのをすっかりと忘れていたので、書いていこうと思います。

 東洋医学は昔からある医療であり、文献が多く残っているのも他の伝統医学と違う特徴です。古典文献の中にも、がんの存在をみることができますが、「岩」や「瘤(りゅう)」という言葉で残っています。

 

 これらの状態は、簡単に言ってしまえば、「塊(かたまり)」が身体の中にあるという意味になります。身体の中の塊という概念では、「癥瘕(ちょうか)」や「積聚(しゃくじゅ、しゃくじゅう)」もありますが、これは腹部にある塊という意味になります。

 

 癥瘕と積聚は腹部の塊ということでは同じなのですが、塊としては外側・内側に分けることができ、積・癥は内側・深部という意味を含み、聚・瘕は外側・表層という意味を含みます。

 

 何故、癥瘕と積聚を分けているかといえば、癥瘕は婦人科疾患、積聚は胃腸疾患という区別があるので、下腹部で子宮の辺りにあるのは、積聚とも言えますが、癥瘕という言葉にすれば、婦人科疾患なのだと分かりますよね。病態の把握という意味で癥瘕と積聚という2つの言葉があります。

 

 がんの話に戻ります。東洋医学では、原因がよく分からないけど、人の中には、塊が出来るものがあり、死につながってしまう場合の病を「岩」や「瘤」という言葉で表現をするようになります。

 

 東洋医学は気血津液が身体の中に流れることで成り立っていると考えていますが、この気血津液に問題が生じてしまった場合に病が生じると考えています。そのため、「岩」のような塊が生じる原因は気血津液の異常として考えることができます。気血津液の問題を考えることを気血津液弁証といいます。基本的な用語に関してはこちらを参考にしてください。

「だから気って何だよ」「気には分類がある」

「生命現象と気―気の作用」

「東洋医学の血と現代医学の血液の違いは?」

「身体の中の水分―津液の話し」

「気血津液精のまとめ」「気血津液弁証」

 

 身体の中に気血津液が流れていることが正常な状態ですが、日々の疲れ、ストレス、内臓の疲労、環境変化などによって、気血津液の流れが悪くなってしまいます。例えば、水がよく流れている排水溝にはゴミが貯まらないですが、水の流れが悪いところはゴミがたまってしまいますよね。このゴミが貯まった状態が病になると考えるのが東洋医学の特徴とも言えます。

 

 ゴミが貯まっていたとしても、大雨が降ったりすれば水の流れの勢いによって、ゴミがなくなりますが、あまりにもひどくなってしまって岩のようになってしまえば、どんなに流れがよくなっても岩を取り除くことが出来なくなります。この状態が東洋医学で考えるがんであり、気血津液の異常と考えていきます。

 

 気血津液の問題だけではなく、身体の中にある、冷やす働きの陰気、温める働きのある陽気の問題も病気の原因と言われていきます。陰虚と陽虚についてはこちらのブログに書いてあるので参考にしてください。

「東洋医学で考える暑がりと寒がり―陰虚と陽虚」

 

 昔の時代では、がんにかかって亡くなってしまう前に、感染症などで亡くなることが多かったので、がんが死亡原因の上位にくることはなかったのでしょうが、現代の先進諸国では寿命も長くなったので、がんという死因が目立ってきている状態なので、がんという病気は加齢とも大きく関係をしていきます。

 

 東洋医学で考える加齢は身体がどのように変化をしていくのかというのを考えたときに、幼い頃は水分が豊富で、高齢になると乾いてくるというイメージから、身体の水分成分とも言える陰気の不足と考えていくことができます。

 

 身体の中にある陽気は気、身体の中にある陰気は血津液精というのが東洋医学での考えでしたね。

 

 がんは高齢化とも関係をするものなので、病態としては、陰虚が原因と言うこともでき、陽虚はあまり関わらないと言えます。陰虚は冷やす力の不足になるので、身体がほてるような状態になりますが、詳細は先ほどの陰虚と陽虚に書いてあるブログを参考にしてください。

 

 がんは気血津液の異常、陰虚という熱の状態で発生をさせやすいと言われてくるのですが、身体がどんどんと弱っていくことから、身体のもっている力(気血津液精陰陽)の不足が大きく関係をしていきます。

 

 がんだから、この弁証しかないということではなく、必ずその方の気血津液精陰陽の状態の確認をして、その方の証を決定することが重要なことであり、証が決定したら、どのように発症したのかを考えていくことになりますね。

 

 例えば、がんが発生している人がいたときに、陰虚だったとすると、がんという塊ができた原因は血津液精の不足から発生してきたのだなというのが分かるので、陰虚の治療と血津液精に関しても考えていくことが必要になります。

 

 陰虚は虚熱証とも言われ、熱がある状態ですが、熱が発生をしてしまうと、身体の中の冷やす働きの陰をどんどんと低下をさせてしまいます。陰が不足をすると、身体の中で流れる力が不足をしていってしまうので、先ほど出てきた排水溝にゴミが貯まる状態となってしまいます。

 

 東洋医学で考える、がんに関しては、身体の状態を四診でしっかりと把握をして、気血津液、臓腑の状態をしっかりと見ていくことが大切になると考えられます。四診に関してはこちらのブログでまとめてあります。

「東洋医学の診断法―四診」

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