本虚標実

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 東洋医学の用語は、一つの単語をいろいろな意味として使っていけるので、慣れるまでは大変ですが、慣れてしまうと身体の状態を簡潔に表現することが出来ます。

 本虚標実は、身体の本質が虚証だが、主な症状が実証を現すものになっているものであるということを標本虚実という単語を利用することで身体の状態を簡潔に表すことが出来ます。

 

 生命力があるということが温かいということであれば、疲労によって生命力が低下をし、冷えが生じているようであれば本虚と呼ぶことが出来るでしょうし、寒熱バランスを整えることができなくなってしまって、下が冷えて、上がのぼせるような状況だと本虚標実だと表現することができます。

 

 上がのぼせて、下が冷えるというのは、上実下虚・上熱下寒とも呼ばれ、東洋医学の学習をしている人であれば必ず聞く単語の一つだと思いますが、疲労から発生しているのであれば本虚標実になりますね。気血が豊富で阻滞が生じてしまい、のぼせ・冷えが生じている場合は、本虚標実はないけど、上実下虚・上熱下寒が生じていると言うことも出来ます。

 

 標本・虚実はともに曖昧な表現でもあるので、標本・虚実の本質的な意味を理解しておかないと分からなくなりやすいので注意が必要ですね。

 

 標本は、治療において使われやすい単語で、標は局所、症状、急性を現し、本は体質、状態、慢性を現しているので、体質に対する治療は本治、症状に対する治療は標治と表現をされることが多いですし、体質と症状に対する治療を行うことが多いので、標本同治とも言われることがあります。

 

 身体の問題によって症状が出てくるのであれば、本の問題によって標が出たとも言えるので、用語としては応用していくことができます。

 

 虚実は東洋医学の考え方に取って大切なものであり、虚は弱いや慢性などになり、実は強いや急性などにすることが出来ます。体質が弱いのか強いのかを虚実という用語によって分けることができますし、気血の不足であれば虚、気血の停滞であれば実というようにしていくことも可能になります。

 

 標本と虚実という用語を組み合わせていくことで本虚標実と言うことが出来ますが、加齢によって生じる症状は全て本虚標実であると言うことも可能になります。加齢によって生命力が低下をしているというのを前提にすれば、本質的に虚という状態ですし、症状は外に表れているもので、正常よりも強いので実となります。

 

 例えば、高血圧は現代医学的に考えれば、加齢によって血管壁の柔軟性の低下などによって、血圧が高くなると言われていきますが、これを東洋医学的に考えた場合は、生命力の低下によって、強いという状態である高血圧が出ているので、本虚標実の状態だと表現をしていくことが出来ます。

 

 使おうと思えば簡単に使っていくことができますが、加齢による病を全て本虚標実と表現してしまえば、年を取った人は全て本虚標実で終わりになってしまって、それ以上の鑑別をすることもできなくなってしまうために、おおざっぱに身体の状態を把握するのに使われたり、用語の説明にプラスされたりして使われる物だと思います。

 

 例えば、脾の働きが低下をしてしまうと、身体には余分な物である湿が発生をしてしまいますが、この場合は虚と実が同時に存在をしてしまうことになります。この場合は、本質的には虚があり、状態としては実も出てきているので、本虚標実という表現をすれば、本質的な問題に虚があるというのが分かります。

 

 逆のパターンとして飲食の問題によって湿が身体に貯まり、結果的に脾の働きが低下をしてしまうことがありますが、この場合は本虚標実の状態ではないので、外からの影響であるというのは本虚標実と表現をすれば鑑別の用語にもなります。

 

 肝陽上亢も陰虚がもとで、そこから熱が強くなってしまった状態なので本虚標実と表現をしていくことが出来ますし、陰虚(東洋医学で考える暑がりと寒がりー陰虚と陽虚)があり心火がある心腎不交も本虚標実と表現していくことができます。

 

 ただ、心腎不交の場合は、腎陰虚と心火が同時に発生していくこともないとは言えないので、本虚標実の典型的な物は脾虚湿盛と肝陽上亢なのかなと思います。

 

 気血の病証である気虚血瘀も、気虚から発生をして、気の推動作用が低下したことにより血瘀になっているのであれば、本虚標実と表現をしていくことが出来ますし、他の気血や臓腑の複合病証も本虚標実と表現を出来る物が出てくると思います。

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