陽虚と陽実に対する治療

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 陽虚と陽実は、風邪(かぜ)の状態で症状が違う場合を指すことがありますが、陽虚は冷え、陽実は熱として考えていくことができるので、どういった状態についての話なのか注意しないといけないです。

 東洋医学のとくに鍼灸では、同じ単語で逆の意味になることがあるので、注意をしないといけないので、過去のブログでも何度か説明をしていますので、関連する物を含めて参考にしてみてください。

陰虚は寒がり陽虚は暑がりは正解?

 

 

 陽虚と陽実は身体の状態として考えていくことができるので便利な言葉なのですが、視点を変えていくことで状態が変わることになります。

 

1.外感病としての陽虚・陽実

①陽虚と陽実の身体の状態

 陰陽は、物事を分類していく考え方になるので、様々な物を陰陽によって表現していくことができます。さらに虚実という概念を足すと、より具体的なイメージにしていくことができます。

 

 陽虚・陽実とセットで言われるときには、寒熱バランスの話ではなく、身体の表側の話として使われていくことが多いです。病が身体の内側にあるときは裏、病が身体の外側にあるときは陽。体内の問題であれば裏、体表の問題であれば表になります。

 

 陽虚・陽実で表現をしていくと、陽虚の状態は体表の虚と考えていくことができます。陽実の状態は体表が実として考えていくことができます。陽実の状態は、外邪が体表に侵襲をしてきている状態になるので、陽実を取ることで身体の状態をよくしていくことになります。

 

 陽虚の場合は、外邪によって体表の衛気が障害をされている状態になるのですが、体表を守る力が身体の深部に入ってしまって、体表を守る気がなくなってしまっている状態とも言えます。

 

 こういった考え方は教科書や中医学的内容と違うので、学生や卒業したばかりの人に取っては分かりにくく、意味不明に感じることがあるかもしれませんが、陰陽、表裏、身体の内外をゆっくりと考えていくと理解できると思います。

 

②陽虚と陽実の治療

 外感病で考えていくときにはどちらも外邪との関係があり、風邪(かぜ)の状態になるので、外邪を取り除く治療になります。虚実の違いがあるので実の方は瀉法でいいのですが、虚の場合は正気を助けていかなといけないので治療においては注意が必要になります。

 

 虚実に対する治療は自分の治療スタイルと関係するので、どういった治療がいいのかというのは非常に難しいですが、単純なやり方であれば、開闔の補瀉を使うのもいいかもしれないです。

 

 開闔の補は鍼をしたところを閉じていく方法で、瀉は鍼をしたところを閉じない方法になります。

 

2.八綱弁証での陽虚と陽実

①陽虚と陽実の状態

 八綱弁証は『傷寒論』のときから使われている物で、鍼灸のみならず漢方の世界でも多く利用されているので、陽虚・陽実というときには八綱弁証から考えていくことの方が多いのではないかと思います。

 

 八綱弁証は表裏、虚実、寒熱、陰陽の8つの単語を使っていく方法で、表裏だとどちらか、虚実だとどちらか、陰陽だとどちらかで判断していくもので、陰陽はほとんど使わないので、表裏、虚実、寒熱で身体の状態をみていくことになります。八綱弁証に関しては過去のブログでも書いているので参考にしてみてください。

八綱弁証

 

 八綱弁証で考えていくときに、陽虚は虚寒であり、陽実は実熱になります。表裏に関しては裏になるともいえるのですが、陽実は表の問題でも生じることがあるので、表裏弁証はここでは省いています。

 

 陽虚は身体を温める働きである陽気が不足をしている状態なので、身体が冷えやすい状態になっています。陽実は身体を温める働きである陽気が多い状態になっているので、身体は熱い状態になっています。

 

②陽虚と陽実に対する治療

 陽虚の場合は、冷えになってくるので温める治療を行うことになります。臓腑の働きを考えて治療を行うのであれば、陰陽の元である腎を使っていくといいでしょうね。

 

 陽実の場合は熱がある状態なので、外邪から熱が発生しているのであれば外邪に対処する必要がありますが、内熱から生じている陽実であれば、内熱を発生させている原因を取り除かないといけないので、原因によって治療が変わってしまいます。

 

3.まとめ

 陽虚と陽実は使い方によって意味が変わってしまうので、どういった意味で話をしているのか分からなくなると思うので、まとめて書いてみました。書いてみようと思ったきっかけは業界紙と言われている物の中でも、人によって反対の意味になるのが書かれていることがあったのでまとめてみました。

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